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芸人グッドウォーキン上田さんをつくった
「スニーカー&刺繍」と「好き」が見える暮らし ー 前編 ー

  • DATE.
    2019.07.16
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デビュー6年目でM-1準決勝に進出するも、ブレイクの兆しが見えてきた頃にコンビを解散。その後は代表作やテレビ出演は数えるほどもないまま、ピンとコンビを繰り返し、すでに芸歴17年。
そんな崖っぷちの芸人が脚光を浴びたのは、バイトで稼いだお金を注ぎ続けてきた「スニーカー」と、彼女にフラれて始めたという「刺繍」がきっかけだった。

今回はご自宅を訪問し、長すぎたブレイクまでの道のりを聞きながら、上田さんの「好きなモノ」たちが、どう日々の暮らしに落とし込まれているのかを探った。

グッドウォーキン上田歩武 プロフィール

1980年11月12日生まれ。滋賀県彦根市出身のB型。20歳のころ、大阪NSCに23期生としてに入学し、コンビ芸人・ピン芸人を経て2010年に上京。2015年に同期の良平とグッドウォーキンを結成。2017年より、手刺繍を施したキャップブランド「goodwalkin」を展開している。

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「大阪に出たかった」それだけの理由でNSCに入学

「高卒で地元の鉄工所に就職したんですけど、馴染めなかったんですよね。とにかく大阪に出たかったけど、フリーターじゃ親の許しが出なかった。 『んじゃ、NSCに行くか』そのぐらいの感覚で芸人の道を選んだっていう」

「最初のコンビは、けっこう調子良かったんです。笑い飯とか千鳥とかと一緒に『baseよしもと』に出て、『ABCお笑い新人グランプリ』の決勝に進出、『M-1グランプリ』も準決勝に進出して……。このまま行けばうまいこといくんちゃうかな、ってところで、コンビが解散したんです」

しぶとく続けてきた「ファッション」が、ネタになるまで。

「物心ついた頃から、ファッションが好きで……友達もおしゃれが好きなタイプが多かったですね。昔はそれこそ黒いスカートとかも履いてましたよ(笑)。

東京には2010年に出てきたんですけど、全く鳴かず飛ばずで。芸人仲間と同居生活して、喧嘩したらゲームやって仲直りして……なんていう生活を続けてました。ファッションが好きだったから、たまにYouTubeでファッションに関することをネタにして配信したりもしてました。でも、びっくりするぐらい誰も見ない。好きなことをネタにしてもウケないなら、もう芸人やめようと思ってたんですけど、今の相方に『最後に俺と組もう』って説得されてしぶしぶ続けることにしたんです」

 

「ちょっと風向きが変わって来たのは、2015年ごろからですね。レイザーラモンRGさんたちとスニーカー同好会を組んでイベントをしたり、ネゴシックスさんと裏原に関するトークライブをしたりと、ファッションを絡めて、お笑いとちょっと違う角度からの活動が増えてきたんです」

「すでに売れてるこの人たちに混じりつつ目立つにはどうしたらいいか、って考えたときに、『俺には暇がある。情報を集めたり、朝から並んでレアなアイテムを手に入れることならできる』って思って。

高校の時にバッシュブームの全盛だったんで、それなりに自由なお金ができてからはエアジョーダンシリーズを集めるぐらいにはスニーカー好きだったんです……。でも、それが仕事になりはじめてからは、スニーカーを買うペースがさらに早くなっていくんです(笑)。

だんだんスニーカー好きの芸人として知られていったのもあって、ついに『アメトーーク!』のスニーカー芸人に出させてもらって。やっぱり、反応は大きかったですね。5000人だったSNSのフォロワーが、放送中にどんどん増えて1万人超えるっていうのを目の当たりにしましたから」

自分でも「こんな数のスニーカー、いらんやろ!」って思います

上田さんのワンルームの部屋の一角には、スニーカー収納BOXが天井まで積み上げられている。

「部屋は、まぁ普通のオトコの一人暮らしですよ。ちょっとスニーカーが多いくらいで(笑)。『こんないらんやろ!』 って思いますよね。自分でもそう思います。TOWER BOXに収納してますけど、やっぱり入りきらずに箱で積み上げてるし」

 

「買っても履かない」という選択肢は、ない

「お気に入りですか? それは当然、玄関にあります(笑)。基本的に履かないっていう選択肢はないんで。Tom SachsとNikeがコラボした、Mars Yard 2.0とか50万ぐらいついてますけどね……。

最近よく履いてるのが、ブーツで有名なUGGが出してるスニーカー。ダッドスニーカーみたいなルックスも今っぽいし、何より履き心地がイイんです」

失恋をきっかけにはじめた「刺繍」

上田さんの刺繍道具と、イベントでオーダーを受けたときに作る刺繍シューズ。普段はもっぱらキャップに刺繍をするそう。

「昔付き合ってた彼女の趣味が刺繍で。『今度教えてよ』って言ってたんですけど、教わらないまま振られてしまって。なんか悔しいんで、独学で作り始めて毎日SNSにアップし続けてたら、5ヶ月ぐらいたった頃にBEAUTY&YOUTHのバイヤーの方に『インストアイベントをやりませんか?』って声をかけてもらって。

 

2日で80件のオーダーが来ちゃったんで『バイト休ませてください』って……実は、今もバイトを休ませてもらってる状態なんです(笑)」

「刺繍するときは、このソファに座ってiPadで映画見ながらって、いうのが多いですね。あと、インスタでライブ配信しながらとか。刺繍は好きというより成り行きで始めたんですけど、毎日なるべく1つは作ることにしてて、今はもう仕事って感じです」

話をしながら、10分ほどで「目玉焼き」の刺繍が完成。

部屋のあちらこちらに見える、人間関係と好きなモノ

カーテンレールの上には、南海キャンディーズのしずちゃんに描いてもらったという絵が。右の顔が上田さんで「刺繍芸人」らしく針を持っているところだそう。

「ついこの間も呑みに誘ってもらったんですけど、しずちゃんとはとても仲良くさせてもらっていて。この絵は、僕が銀杏BOYZのファンだっていうことで描いてくれたものなんです。峯田さんと僕の顔が組み合わさってるっていう(笑)」

「ミニスーファミは、もはや使ってないんでインテリアと化してますね。ステッカーも好きで、もらったものとかを冷蔵庫に貼りまくってます。もっとすっきりした部屋にしたいと思ってるんですけど、このごちゃっとした感じも好きなんですよね」

ブレイクまでの、長すぎる17年間。ただ純粋にファッションが好きで、人知れずスニーカーを集めてきたという上田さん。ふとしたきっかけで作り続けるようになった刺繍作品で注目されるようになり、そのスニーカーマニアぶりが世間から「発見」されることになった。

そんな上田さんの暮らしに寄り添ってきた、等身大のワンルーム。人に注目されるきっかけなんて、意外に身近なところにあるのかもしれない。ふとそんなことを思ってしまうような部屋だった。
 

photography/原田教正  text/木村浩章