chikoさんプロフィール
インテリアデザイナー、DIYクリエイター。20年前に中古で購入した自宅をDIYで大改造。DIYの楽しさをブログやSNSで発信し、人気を集める。メディア出演やDIYセミナー、商品開発を行うほか、近年は空き家DIYのプロデュースにも注力している。著書に『カフェみたいなお家を作ろう』(宝島社)がある。
築10年の中古住宅を購入し、自らの手でDIYをしながら作りあげたchikoさんの住まいは、元の姿の面影が一切ないほどに大改造されています。ご自身もDIYクリエイターとして、Instagramやイベントを通じてDIYの魅力を発信。今もなお自分の手で理想の住まいを作り続けるchikoさんの「好きをかたちにする暮らし方」を覗いてみました。
インテリアデザイナー、DIYクリエイター。20年前に中古で購入した自宅をDIYで大改造。DIYの楽しさをブログやSNSで発信し、人気を集める。メディア出演やDIYセミナー、商品開発を行うほか、近年は空き家DIYのプロデュースにも注力している。著書に『カフェみたいなお家を作ろう』(宝島社)がある。
chikoさんご家族が暮らすのは、20年前、結婚と同時に購入した中古戸建て物件。「まだ20代で若かったのもあって、ほぼ勢いだけで決めちゃったんです(笑)。当時はまだどういう家に住みたいかとかは、あまり考えていませんでしたね」とchikoさん。
購入したのは注文住宅で建てられた物件で、外観や間取りが気に入ったそう。しかし、住み始めて最初の冬を迎えたとき、ある異変に気が付いたのだとか。「家の中なのに、すっごく寒かったんですよ。床に断熱材が入ってないうえに板がペラペラで。買ったときは春だったから気が付かなかったんですよね(笑)。直したくても、家を購入したうえにリフォーム代まで出せるはずもなく…。だから、自分たちでやるしかないなと」
寒さを解消するため、まずは床の貼り替えに取りかかったというchikoさんご夫婦。ホームセンターで断熱材を購入し、床板はネットで調べてボルドーパインという木材を調達。塗装まで自分たちで行い、板を敷き詰める作業のみを大工さんにお願いしたそう。
さらに、窓はすべて二重窓にして冷気が入ってくるのを防止。寒い冬でもどうにか快適に暮らせるようにしたい!という思いで、一気にリノベを進めていったといいます。
''寒さ対策がきっかけ''という思いもよらぬ理由から始めたDIY。しかし、その後もchikoさんのDIY熱は冷めるどころか高まるばかりだったそうです。
「最初はシンプルなインテリアでしたが、住んでいくうちにもっと変えたいという欲が膨らんでいって……。なんとchikoさんが現在アトリエとして使っている1階の部屋は、もとは和室だったそう。
砂壁に板壁を作り、DIYの工具や材料を収納する棚を設置。オリジナルのラベルやステンシルを施すことで、原型がわからないほどがらりとイメージチェンジ。chikoさんが好きなビンテージテイストのアトリエが出来上がったといいます。
さらには、ウッドデッキもDIYで取り付けたというから驚き。「ウッドデッキは小屋っぽくしたかったので、板壁を取り付けました。窓は友人が築100年の家を解体するときに譲ってもらったものなんです」
空間に手を加えるとき、chikoさんがいつも意識しているのが「どんな景色を見たいか」ということ。
「家は毎日過ごす場所だから、好きな景色を作りたい。そうすれば、キッチンに立ってご飯を作る時間も、掃除をする時間も楽しく過ごせるじゃないですか」
そういう想いが原点となり、キッチンのカウンターごしに見えるダイニングとリビングはchikoさんの好きなカフェのような雰囲気になったといいます。
リビングでは、ソファに座っているときに「コンクリートっぽい壁が背景にあったらいいな」と思い立ち、窓側の壁はピスタチオグリーンに、テレビ後ろの壁は漆喰の上からグレーを塗ってコンクリートの質感を出したそう。でも最近は少し気分が変わったようで、「壁の下のほうを板壁にしたいと思っているんです」とchikoさん。今の景色が見られるのも、あとわずかかもしれません。
住み始めて20年経ち、家中のリノベはやりつくしたように見えますが、「この家に住み続けている以上、終わりはない」と話します。
「1つ手を加えるたびに今度はこっちを変えてみようかなとアイデアが浮かんで、その繰り返し。それに、家族の成長とともに部屋の使い方も変わってきます。だから、住んでいる間はずっとこの家は完成しないんです」壁を塗り替えたり、収納アイテムを作ったりすることは、chikoさんにとって掃除や洗濯と一緒で日常茶飯事。つい最近も、玄関の板壁を白く塗ったばかりだそう。
「春も近いし、玄関を開けたときに明るい雰囲気にしたいなと思って白く塗りました。洋服の模様替えをするように、季節や気分に合わせて部屋の景色も変えたいなと」
玄関を白く塗り替えたときは、高校生の娘さんから「あれ、変わった?」と聞かれたそうですが、基本的には家のどこかに手を加えても家族は無反応なことが多いのだとか(笑)。
「あちこち変えているせいか、みんなスルーするんです。この前、子どもたちがテレビを見ている後ろで私が壁にステンシルを始めたときも、何も言わなかったですね。『あ、またやってる』という感じで(笑)」
DIYにハマり、最初は趣味でやっていただけだったのが、ブログで発信するうちに人気が集まりついには書籍化。その後は企業からイベントや商品開発などの声がかかるようになり、とうとう仕事にしてしまったというchikoさん。
「専業主婦だった私がDIYクリエイターとして活躍するなんて、家を買った頃は思いもしないですよね。私がしたのは『好きなことやり続けること』と『やりたいことを発信し続けること』のたった2つ。自分が作った空間をブログで見てもらって、いいねって言われたりコメントをもらうことが次のモチベーションになって、ここまで続けることができたと思ってます」
そして、次々とやりたいことを実現していくchikoさんの姿を間近で見て育った2人のお子さんも、夢中になれる趣味を見つけて自分なりの世界を深めているのだとか。
「高校生の長女はお弁当作りにはまっていて、作ったお弁当の写真をSNSにアップして楽しんでいます。中学生の長男はギターが趣味。いろいろなコード進行を練習しています。私が家の中で好きなようにDIYして、それを仕事にまでしている姿から2人とも何かを感じてくれているようで、『自分もがんばれば何でもできる』という意識を持っていろんなことにチャレンジしているのかなと思っています」普段はchikoさんがDIYをしていることに何も言わないお子さんたち。けれど、chikoさんが日々の暮らしを楽しんでいることを実は誰よりも知っているのもこの2人。日常のふとした瞬間にポロリと、chikoさんに気持ちを伝えてくれることがあるそうで…。
「この前、息子が突然言ってくれたんです。『病気になって外で遊べなかったときに、お母さんが一緒にDIYをしようって言ってくれて、パチンコ台を作ったことがすごく思い出になっている』って。もう6年経つし、1回もそんな話聞いたことなかったんですけどね。不意打ちで言われたので、あやうく泣きそうになっちゃいました」
chikoさんがDIYで生み出した空間とそこで過ごす時間は、家族にとってもかけがえのない宝物になっているようです。
「DIYを流行で終わらせるのではなく、文化にしたい」と話すchikoさん。その言葉を実現するために、現在は空き家をDIYで生まれ変わらせる取り組みに力を入れているとのこと。
「DIYはある程度ブームになったので、次はDIYが世の中に必要とされるところまで持っていきたいんです。今、空き家が社会問題になっていますよね。私が自宅をDIYして悩みを解決したように、空き家問題の解決にもDIYを役立てることができるんじゃないかなと。
それで、ブログで『空き家DIYをしたい!』って書いたら、空き家をプロデュースするチャンスをいただきました。古くなった家をDIYでよみがえらせて、また使ってもらえるようにする。それを地域活性化にもつなげていく。これが今、私が一番やりたいことです」
自分の手で作り上げた家で、大好きな趣味に没頭して、仕事もする。そんな今の暮らしはchikoさんにとって理想の暮らしなのだそう。
「最初はこの家を買って失敗したかなって思っていたけど、今は理想の暮らしが全部叶っちゃったんですよね。でも、まだまだこの家でやりたいことはある。『もっとこういうふうにお部屋を変えたい』って思いつくうちは幸せだなと思います」chikoさんがDIYで生み出す世界は、自宅という枠を超えてこれからも進化を続けていきそうです。