グッドウォーキン上田歩武 プロフィール
1980年11月12日生まれ。滋賀県彦根市出身のB型。20歳のころ、大阪NSCに23期生としてに入学し、コンビ芸人・ピン芸人を経て2010年に上京。2015年に同期の良平とグッドウォーキンを結成。2017年より、手刺繍を施したキャップブランド「goodwalkin」を展開している。
グッドウォーキン上田さんの「飾らなさすぎる」部屋での日常を覗かせてもらった前回。後編では、彼の手によるヘタウマな刺繍で人気上昇中のブランド「goodwalkin」のキャップコレクションを紹介してもらうとともに、自身のルーツを垣間見れるコーディネートも披露。さらに住まいに対するこだわりについても聞く。
1980年11月12日生まれ。滋賀県彦根市出身のB型。20歳のころ、大阪NSCに23期生としてに入学し、コンビ芸人・ピン芸人を経て2010年に上京。2015年に同期の良平とグッドウォーキンを結成。2017年より、手刺繍を施したキャップブランド「goodwalkin」を展開している。
「刺繍のモチーフは、けっこう食べ物が多いですね。あとは、日常のちょっとしたワンシーンとか、動物を擬人化したものとか」
「最近のヒットは、バンクシーのアートがシュレッダーにかけられてるとこ。
刺繍糸でうまいことできたな、っていう」
上田が自ら手刺繍を施すブランド「goodwalkin」。その人気の理由のひとつには、インストアイベントなどで行われる受注会の際に、好きなモチーフをオーダーできるという点があげられるだろう。
だが、そのオーダーも一筋縄ではいかない時もあるようで.......
「オーダーでしんどかったのは、『DA PUMPの7人』っていうやつ(笑)。なんとか7人の特徴を捉えて作りましたよ(笑)。ルールも決めんと始めちゃったから、仕方ないんですけどね......。基本、刺繍キャップは自分では被らないんですよ。唯一インストアイベントなどで被るのが、名札がわりに『上田』って刺繍したやつ。それだけですね」
そして上田を有名にしたもう一つの側面が、『スニーカー芸人』としての顔。そのコレクションは、日々の地道な情報収拾に支えられていた。
「スニーカーは、Nike+ SNKRS.とかツイッターやインスタで情報チェックして、webの抽選に応募して......って普通の人と同じです。基本欲しいものしか買いません。おすすめですか?スニーカー好きならチェックして欲しいのは、HOKA ONE ONE(ホカオネオネ)。分厚い食パンみたいにクッションが効いてるんで、一度履いてみて欲しいです」
「夏は基本、Tシャツですね。『たくさん収納できる』っていう理由で、丸めて収納してます。冬はスウェット。ちょいオーバーサイズが基本ですね。コーディネートは......柄のパンツ合わせるならトップスと靴はシンプルめにして、ぐらいのもんですよ」
sacaiとNIKEがコラボしたBLAZER MIDは、NIKEの象徴であるスウィッシュや靴紐などが二重になった個性的な一足。パンクっぽいディテールのトップス&短パンをコーデ。
ストリートコーデにパンクなディテールのアイテムを ミックスすることも多いという上田さん。そのルーツには、マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドがロンドンパンク全盛 の1970年代に立ち上げ、藤原 ヒロシらが90年代に再評価 したことでストリート 愛好家にも知られるようになったブランド、SEDITIONARIESがあるのだという。
「いくつになってもこういうテイストのもの、好きなんですよね。やっぱりSEDITIONARIESは衝撃 でしたよ。トップスにはシンプルなTシャツが多いんで、パンツで遊ぶのも好きですね」
GOODENOUGHの名作、グレッチTシャツは発売当時買えず、最近になって古着で購入。リメイクしたLEVI’Sの66モデルと、現行のSUPERSTARを合わせて。
「やっぱり裏原宿 の世代 なんで、藤原 ヒロシさん、ジョニオさん、NIGO®さんは好きです。当時の 雑誌 で見た 感じが 忘れられないんですよね。地元じゃPORTERのバッグも買えなかったから、その元ネタの 軍モノのヘルメットバッグを買ったりしてました」
デニムにも思い入れがあります。学生の時とか、早く色落 ちさせたくって学生ズボンの下にジーパン履いてましたから(笑)。このLevi’ sは細かく 補修 の具合をオーダーしたんで、元の価格 より リメイク 代が高くつきましたけど、その分気に入ってるんです。
部屋の一角にスニーカーがうず高く積まれているという点を除いては、ファッション好きな男の一人暮らしの典型ともいえる上田さんの部屋。今後はどのような部屋に住んでみたいか、聞いてみた。
「今は壁に穴あけたりできないんで、ひたすら積み上げる収納になってますけど、できることなら壁にスケートデッキ飾ってみたりしたいですよね。高校生の時は古着屋みたいな部屋に憧れたりもしましたけど(笑)、今は極力すっきりさせたいなって思ってます。スニーカーを飾った趣味の部屋と、刺繍するアトリエとあったりしたら最高ですけど」
芸人、スニーカーマニア、刺繍職人と、さまざまな顔を持つ上田さん。その本業は何かをたずねると、意外な言葉が返ってきた。
「本業ですか?……あえていうなら、フリーターですかね。芸人? それじゃ全く食っていけてませんから。そもそも『本業は何ですか?』なんて聞かれたら、逆に20分ほど問い詰めてあげたいですよ。『じゃ、あなたの本業は何ですか』って。
今はありがたいことに刺繍のオーダーが途切れないんでバイトを休ませてもらってますけど、いつでもバイトに復帰できるようにしてますから」
「僕、11月12日生まれなんですけど、この日って「洋服記念日」らしいんですよ。明治時代に制定された、由緒正しい記念日。それに「歩武」って名前でスニーカー好きっていうのも、なんかの運命なんかな、って思ったり。それにしても、人生何がどうなるかわかんないっすね、ホント」
飄々とした雰囲気の中にも、どこか頑固な面も垣間見ることのできた今回のインタビュー。
若さゆえの軽い気持ちで芸人を志しながらも、下積みというにはあまりにも長い17年という年月を経た彼を浮上させたのは、思春期から育み続けてきたスニーカーやファッションへのこだわりと、ひょんな偶然から手がけるようになった刺繍だった。
そんな彼の「あえて本業を、というならフリーター」という言葉からは、ただただ目の前にある好きなことに打ち込んできた結果、世間から『発見』された男の、人間としての自信のようなものが感じられた。
前編はこちら↓
photography/原田数正 text/木村浩章