IDÉE小林夕里子,小林夕里子 DATE 2019.09.24

お気に入りを重ねて飾り、日々を楽しむ。
IDÉE・小林夕里子さんのものへの愛情が詰まった住まい

2年前、築33年の低層マンションを購入し、リノベーションに挑戦したIDÉEの小林夕里子さん。お店のディスプレイを担当する小林さんの住まいは、小さなギャラリーのよう! 壁に飾られたアートや雑貨、棚にセンスよく並ぶオブジェや本、そしてたくさんの椅子……。どこを切り取っても、物語がふわりと立ち上がってくるような心地いい空間が広がります。ものへの愛情とこだわりが詰まった住まいを覗いてみましょう。

小林夕里子さんプロフィール

2007年、オリジナルの家具や国内外からセレクトした雑貨を扱うインテリアショップ〈イデー〉に入社。副店長などを経て、全国のイデーショップのディスプレイを監修するVMD(ヴィジュアルマーチャンダイザー)に就任。プライベートでは、昨年ご結婚。ふたり暮らしを満喫中!

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もとは3DKだった間取りを1LDKへ。寝室のスペースを拡張し、W.I.Cを確保。「新居では料理を頑張って」という自分へのエールを込めて、キッチンは広めにしたそう(笑)

家を買ったのは、人生に新しい風を吹かせたくて

以前は、アクセスのいい都内の賃貸マンションに暮らしていた小林さん。住宅購入のきっかけは「自分の “理想” を追求する場として、賃貸だと限界があると感じたから」だといいます。

「あと、気分的に環境をがらりと変えたかったのもあって。何か思い切った選択をして、人生に新しい風が吹けばいいなって思ったんです」

そんな小林さんが選んだのは、豊かな緑に彩られた神奈川の住宅街に建つヴィンテージマンション。決め手は燦々と日差しの入るリビングスペースだったそう。さらに壁一面に広がる開放的な窓の先を見上げると、ぽっかりと大きな空。この抜け感にも惹かれたといいます。

実はこちらのリビングスペース、もとは3部屋に分かれていたそうですが、空間の気持ちよさを最大限引き出すためにも壁は全て取り払い、ひとつながりにしたそう。

ほかにも「外を眺めながら料理をつくりたい」と、オープンスタイルのキッチンにしたり、愛すべき雑貨やアートを素敵に飾れるよう、日用品や雑多なものをまとめて収納するウォークインクローゼットを寝室に設けたり。 “理想の暮らし” から逆算して導いたプランを次々と実現し、唯一無二の空間を形にしていきました。

「丸見えのほうが綺麗にしなくちゃ!というマインドになる」とW.I.Cは、あえて扉を設置せず

リビングの扉は「PINE GRAIN」でオーダー。廊下に光が通るよう、上部はガラスを採用

大好きなものが映えるように。家は、シンプルな箱でいい

子どもの頃からインテリアが好きで、家具をはじめ “もの” に目がない小林さん。白を基調に、余計な装飾のない空間にしたのは「大好きな家具や雑貨が映えるように」という願いを反映してのこと。さっぱりと清々しい空間には、味わい深いヴィンテージ家具や、好きで集めた椅子たちが居心地よさそうに存在しています。

空間にひとさじ加えた “遊びの部分” も、愛すべきものが素敵に見える工夫がちらり。「(ものを置いて)バランスを見てから決めたかった」という理由で、壁や建具の色などは全て入居後にセルフで仕上げたそう。この作戦が大正解! キッチン背面のブルーの壁がその好例です。

「当初はタイルを貼る気満々だったんですけど……。道具や雑貨を置いたら雑多な感じになったので、タイルの “線” はないほうがいいなって。色越しにものがある方が映えると思って、ペンキを塗ることにしました」

洗面所のタイルも、YouTubeの動画を参考にセルフで。「手を加えると、空間に愛着が増しますよね」

さらに、思い入れのある家具が空間にぴたりと決まるよう、間取りまで変更したというから驚きです。

「リビングの一角に置いているデスクは、イデーに入社したばかりの頃に購入したもの。愛着はあるんですけど、年を重ねるうちにインテリアの好みも少しずつ変化して、ほかの家具と合わなくなってきたなと。ひとつの部屋に置いても違和感がないよう、空間を区切って、ワーキングスペースを設けることにしたんです」

「なんだか、ものが主役の家みたいですよね」と、軽やかに笑う小林さん。ものへの深い愛が、この家の心地よさのベースになっているのかもしれません。

IDÉE(イデー)で身につけた “飾る技術” を、家づくりに反映

アルミのブラインド越しに柔らかな光が届くリビングダイニングには、作家ものの花器やオブジェ、アートなどが美しくレイアウトされています。買った土地も年代も作家もバラバラですが、どれも「長く一緒にいたい」と思って選んだものばかり。

「チャーミングで愛嬌のあるものが好きですね。とくに、小さい頃からちょっと崩れた顔をした、ファニーフェイスのオブジェを偏愛する傾向があるみたいです(笑)」

最近は、木版作家の菅祐子さんの作品に夢中

好きなものを重ねて飾る小林さんの住まいは、小さなギャラリーのよう。ものが多いながらも雑然とせず、それぞれが見事に調和しています。素敵に飾るコツは、 “グルーピング” にあるとか。

「棚の上は “ガラスの世界”、ここは “土の世界” などと素材ごとに並べると世界観が出来て落ち着きます。色でまとめるのもポイント。例えば、ダイニングテーブル脇の棚の小物はブルー、グレー、ピンクでグルーピングしています。色のトーンを揃えることでつながりが生まれ、(ものが多くても)空間がまとまりますよ」

定位置から見える景色を、自分好みに整えていく

ダイニングテーブルの黒い椅子が、小林さんのいつもの場所。窓の外も、家の中も見渡せる「この家で一番気持ちがいい場所」なのだそう。

「ここに座った時に、ちょうど目線の高さになるようにキャビネットを特注し、お気に入りのものを飾っています。長く過ごす場所の目線の先に好きなものを飾ると、ふと目に入るたびにくすっと笑えたり、ほっと一息つけたり、出会った時の光景を思い出したり。暮らしを愉しく彩ってくれますよ」

うっとり眺めていると、ほこりに気が付いたり、ディスプレイを変えたくなることもしょっちゅう。
「ひとつひとつ拭いてきれいにしながら、あれこれ想像を巡らせて、並び方を変えるのは楽しいひととき。それだけで、気持ちがすーっと晴れやかになります」

日常の何気ない風景をより自分好みにしていくことも、心地よい時間を過ごす秘訣なのかもしれません。

新しい風が運んできた、日々のしあわせ

この家での生活も落ち着いてきた頃、“新しい風” はふわりと吹き、ある日素敵な出会いを運んできました。
現在は、昨年結婚されたご主人とふたりで、居心地のいい住まいをつくっていると言います。

寝室にはご主人お気に入りの壺をディスプレイ。この壺が映えるよう、壁を深緑にペイントする予定だそう

「一緒にキッチンに立って、夕食を作っている時間が楽しい」と小林さん。聞けば、料理はあまり得意ではなかったそうですが、ここへ越してから “美味しいごはんを作りたい” という気持ちがムクムク湧いているのだとか。

「大きな窓の先にある空を眺めながら、料理する時間が本当に気持ちよくて。自然とやる気が高まった感じです。家族が増えたのもあって、食事の時間を大切にしたいという気持ちも強くなりましたね」

休日の朝。食卓を囲み、お手製のたまごサンドをもりもり食べて。午後は、ドリップしたコーヒーを飲みつつ、時々まどろみながら、大好きな海外ドラマを楽しむ。そんなひとときが、何よりリフレッシュ出来るといいます。住まいは、小林さんの暮らしに温かな幸せも運んできてくれたようです。

小林さんが考える、2軒目の住まいはこちら↓

photograph/冨樫 実和 text/平田 桃子

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