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料理家SHIORIさんの自分らしく育てる気持ちのいい部屋 ―後編―

DATE 2019.12.27 ようこそ私の家へ
女性ファッション誌をはじめ、テレビ、広告、イベント、企業コラボなど幅広く活躍する料理家のSHIORIさん。そんな彼女の理想を詰め込んでフルリノベーションした住まいは、やっぱりキッチンが中心。後編では、自慢のキッチンのこだわりから、料理家にとっての理想の住まいについてまでを伺った。
 

前編はこちらから

SHIORIさん プロフィール

レシピ本『作ってあげたい彼ごはん』など著書累計400万部を超える。和食をはじめ世界 各国で学んだ家庭料理を得意とし、代官山のキッチンスタジオで料理教室『L'atelier de SHIORI』を主宰。中目黑に100%VEGANでサステナブルなファラフェルスタンド『Ballon』を経営する。Instagram はこちら(@shiorigohan)

先生と生徒という垣根を取り払ったスタジオでの料理教室

「現在は主に、アトリエで料理教室やレシピ開発などを行なっています。
海外で料理を学んでいたときに、先生と生徒の距離がとても近いことに驚いて。教える側と教わる側がはっきり分かれている日本の料理教室に対して、海外の料理教室はまるで友人の家に夕食に招かれて、一緒に料理をつくったようなリラックスした雰囲気が流れていました。
なのでわたしのアトリエも、垣根のない、カジュアルな空間を意識しています」

家の中心となるキッチンはデザイン、使い心地にも妥協なく

「アトリエと同じように、自宅のキッチンも人との距離や温かさを意識しています。
前に住んでいたマンションのキッチンは奥まっていたので、友人を招いても会話に参加できず、自分だけ孤立してしまって......。ほかにも、こうだったらいいのになというポイントがいくつもありました」

「例えば、今回リノベーションで一からつくるのであれば、みんなが料理に参加できて集まれるキッチンにしたくて、カウンターをつけました。これは、お酒が大好きな主人の要望でもあって」

「デザイン面でいうと、わたしは無機質な感じがあまり好きではないのですが、かといって木を入れすぎるとナチュラルになりすぎてしまう。そこで、いろいろな素材を使って要素を散りばめることで、全体のバランスを調整しています。
リノベーションをする上でどうしてもきれいに仕上がりすぎてしまう箇所は、職人さんにお願いして風合いや色むらを出してもらったり、アンティーク家具を混ぜ込んだりしました」

「実はアトリエと同じ建築士さんに、自宅のリノベーションもお願いしたんです。この吊り戸棚はその建築士さんのアイデアで取り入れてくれました。フランスのマルセイユにある“ユニテ・ダビタシオン”を参考にした吊り戸棚です」

「もちろん、動線もしっかり考えています。冷蔵庫から食材をとって、洗って、切って、下ごしらえをして、火を入れて、盛り付けて、仕上げをする。その一連の流れに沿ってキッチンが設計されているので、とても動きやすいですよ」

整然としたキッチンよりも、生活感のあるキッチンに惹かれる

「キッチンまわりは、海外で影響を受けたことを随所に取り入れています。
もともと整理整頓が得意な方ではないということもありますが、びしっと整頓され、全てのものが収納されているキッチンよりも、パリのキッチンのように適度にものが出ている雑多な感じがわたしには合っていて。
好きなお皿やよく使う鍋などは、収納せずにそのまま並べています」

「これは、イタリアの料理学校で見て、取り入れた包丁収納のアイデアです。強力磁石なので落ちることはないですし、使いたいときにすぐに取れるのでとても便利ですよ」

「あとは、家具を集めるのが好きな分、やっぱりお皿も大好きで。奥の角皿はロンドンで購入したお気に入りのもの。手前2枚のお皿はパリで購入したものです。1枚は割れてしまったのですが、金継ぎして大切に使っています」

ないものを嘆くのではなく、
自分なりの工夫をして、料理を楽しむことが大切

最後に、SHIORIさんにとって料理がしやすい住まいとはどのようなものか聞いてみた。
「理想は広ければ広い方がいいと思うのですが、みんながその環境を用意できるかといったらそうではないですよね。今ある環境の中で順応し、自分で作りやすいキッチンをつくりあげていけるかが重要だと思います。
わたしが料理家としての活動を始めた頃は、1Kの六畳一間の物件に住んでいました。玄関を開けたらすぐにキッチンで、設備も一口のIHしかありませんでした。IHのとなりがシンクで、どこにまな板を置くんだろうみたいな(笑)。
でもそんな環境の中でも、とにかく工夫をして、しっかりごはんをつくっていました。収納もあまりなかったので、シューズボックスに食器や調理道具を入れて、玄関をまるまる一式キッチン収納として使ったり、もう1台IHを買って置いたり......。
決して恵まれている環境とは言えませんでしたが、その1Kのキッチンから1冊の本がうまれています。やろうと思えばどんな環境でもできるので、環境のせいにして料理が楽しくないというのは、もったいないですね」

「実際にキッチンを使いながら、次はこういうのにしたいなと思い描くことも大切で。不便から得るものや学ぶものって、実はすごく多いと思います。
おいしい料理をつくりたいという純粋な気持ちさえあれば、なんでもできますよ」

「今の住まいに関しては、わたしは広いキッチンがつくれて満足していて、夫は広いテラスやカウンターがあって満足。暮らしの中で二人が大事にしている“食”を中心にしながら、お互いが好きなことを実現できたのは、とても幸せですね」

好きなものに囲まれ、仲間が集まる広いキッチンやテラス。食と人の距離感を中心にしたSHIORIさんの住まいは、時間の流れや変化とともに、育まれていく。

photography/上原未嗣 text/堀江由利子