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築50年の一軒家をリノベーション。
ファッションディレクター大坪洋介さんが暮らす、温故創新な住まいの形 -後編-

DATE 2020.07.30 ようこそ私の家へ
前編では、LAをはじめ世界中で活躍したのちに、帰国した日本でリノベーションをしたご自宅のこだわりを教えてもらいました。後編では、コレクションやマイカーなどの趣味の楽しみ方、モノの選び方についてお聞きします。
大坪洋介 さん

20代前半のころから30年近くLAで暮らし、後にファションビジネスを展開。ファションやライフスタイルのアドバイザーとして多岐にわたり活躍している。

世界中から選び抜いたコレクションが並ぶ趣味空間

居心地の良い住まいを彩るように選び抜かれた、大坪さんがLA時代から時間をかけて集めてきた、インテリアをはじめとするコレクションの数々。

「日本に戻るとき、集めたコレクションの数は40フィートのコンテナ分にまで膨れ上がってました。ふるいにかけられて残ったモノたちが、今の家には溢れてるんです。これを家全体に広げると、もはやギャラリーのように見えてしまい、この家の良さが失われてしまう気がしました」

「だけど、コレクションは家を自分らしく住みこなすためには不可欠なもの。なので、一階の図書室や二階の書斎など、自分だけが使う空間に限定して広げてみることにしたんです。家族と時間を過ごす場所では、伸び伸びと明るく、シンプルなディスプレイを心がけてますね」

海外在住で培った、優美な色彩感覚

そんなコレクションたちは、ヴィヴィッドだけど部屋に馴染み、独特な色彩感覚でセレクトされている。それは、海外在住の間に培われたもの。

「学生の頃、LAで先輩の義兄が営んでいた、レインボーシューズという靴屋さんでバイトをしていたんですが、いろんな配色の靴の色に影響を受けて、色を楽しむのも良いんだと感じたんです。
年4、5回行く事があったスウェーデンのストックホルムでも、目の色素が私たちと違うのかと思うくらい、北欧の美しい色合いに感銘を受けましたね」

マイカーという、男のロマン的存在

そういえば、と大坪さんが次に案内してくれたのは、重厚な壁で覆い尽くされたガレージ。扉を開けると、そこにはまさに男のロマンとも呼べるような光景が。

「これまでいろんな古い車にも乗ってきましたが、現在の愛車が世界に二台しか現存しない1958年式の英国のバックラーDD2というものです。

家と同じで、この車もいつか次世代を生きる誰かに託し、引き継いでもらえればと思ってます。そのために、継承者として愛情を持ってメンテナンスしたり、ドライブを楽しんだりしてます」

「常に考えていることは、自分は新しいライフスタイルを伝える架け橋になるんだ、ということ。感動したこと、美しいと思ったもの、この商品は使い勝手がいいとか、様々な角度でモノやことを研究していくと、まだまだ伝えたいと思うような欲求が湧き出てくるんですよね」

ライフスタイルを豊かにするヒント

生活をより豊かにしてくために身に付けたい、大坪さんなりの選び方のアドバイスとは。

「例えば良いハサミを探すとき、コンビニで売られているものだけではなく、人類がはじめて生んだハサミから、一見ハサミに見えない物、高品質な使い勝手のいい物まで、色々見るんです。手間はかかりますが、そしてやっと選んだ物には、愛着が宿ります」

「どんなに小さい物でも、そうやってこだわる努力をしていけば、お気に入りの物が身の回りにどんどん増えていくことになります。素晴らしいことだと思いませんか?家や空間づくりも、その積み重ねでどんどん良くなります」

モノがあふれたこの時代。古いもの、新しいもの、有名無名の隔てなく常に“いいもの”を見極めること、そしてその目を鍛えていくことが大切だと大坪さんは言います。まさに「古きを温め、新しきを創る」という考えは、ことさら家づくりだけでなく、どんな点においても持っておけば豊かになるものさしになりますね。

Photography/原田数正 Text/浅倉潤一