松㟢 翔平さん
1993年生まれ、埼玉県出身。2018年7月から2019年5月まで台北で活動し、帰国後は「テラスハウス TOKYO 2019-2020」に出演。現在は東京と台北を行き来しながら、俳優やモデル、コラムニストなど多岐にわたり活動している。来秋公開の映画「激怒」(高橋ヨシキ監督)に出演。
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映画やMVでの役者にはじまり、雑誌やWEBでのコラム執筆にトークショーやイベントへの登壇、ときには料理人としてカフェの厨房に立ち「魯肉飯(ルーローハン)」を振舞ったり。松㟢さんの活動は、既存の枠に当てはまらない。彼を一躍有名にした『テラスハウス』でもその奔放な姿勢が垣間見え、ときには意見の違いから、シェアメイトと熱い話し合いに達する場面も。
松㟢さんはいま何をしているのだろう。
「雑誌やWEB、ブランドのルックブックなどでモデルとして起用していただくことが多いですが、並行して他のことにもチャレンジしています」
実は松㟢さん、学生時代は美術系の大学に通い、映画監督を目指していた過去もある。その経験を活かし、モデルや役者として面に立つだけでなく、制作者の側になることもあるそうだ。
「最近では台湾の友人がやっているファッションブランド『PLATEAU STUDIO(プラトースタジオ)』のPRビデオをプロデュースしました。台湾ではどんどん知名度をあげているブランドなんですが、これから日本でも勝負をしていきたい、ということで、友人である僕に声をかけてもらったんです。あ、ちょうどいま履いてるパンツがそのブランドのものになります」
「僕、運がいいんですよね。いまこうして役者やモデルの仕事をさせて頂いているのも、本当に人に恵まれたからというか。
元々は映画監督志望だったんですが、映像の勉強をしていく中で『役者』という仕事に興味を持つようになったんです。大学卒業のタイミングで、とりあえずどこか事務所に所属しようと考えて、ポートフォリオを作って。
そんな折、ふと遊びに行った役者の先輩である嶺豪一さんの家に森岡龍さん(※現在、松㟢さんが所属する事務所の社長。当時は別の事務所に所属)が来たんですよ。その場で色々と話をしたりポートフォリオを見せたりして、そしたら『事務所に置いてもらえるよう聞いてみるよ』と」
ふとしたきっかけから「役者」という道への一歩を踏み出すことができた松㟢さん。しかし、現実はそこまで甘くなかったという。
「門を叩いたはいいものの、実際にはオーディションに全然受からなくて、悔しい思いをしましたね。結局、その事務所は2年ほどで離れることになりました」
役者としてのチャンスを掴みながら、すぐに日の目を見ることは叶わなかった。しかし、また思いがけないところから転機が訪れる。
「事務所を退職して『これからどうしていこうかな』とぼんやり考えていたんですが、そんなとき台湾に住む友人から「シェアハウスが一部屋空くんだけど、よかったら住んでみない?」と連絡を受けたんです。
最初は『何を言ってるんだろう?』と思いましたが、こんなチャンスは中々ないかなと。実はそれまで海外旅行にすら行ったことがなかったんですが、思い切って移り住んでみることにしました」
初めての海外、それも実際に住んでみるとなると、色々な“違い”に戸惑ってしまうこともありそうだ。台湾で暮らすことに抵抗はなかったのだろうか。
「あんまり深く考えてなかったですね。同じアジアの一国で、顔も似てるし親近感あるなというくらいで(笑)。それくらいの気持ちでした。ただ住んでみると、ラフな国民性が自分にとても合っているなと感じたんです。生活に余白がある...というか」
「今回のコロナでも話題になっていたけど、日本は自粛警察的な心理が少し強い国だと思うんです。互いで監視をし合っているみたいな。それが一概に悪いとは言えませんが、日本だと嫌厭されるようなことが、台湾ではなんでもなかったりするのは、逆に居心地がよかったですね」
在台中『テラスハウス』のオーディションに見事合格し、出演のため帰国することになる。そしてNetflixを通して、松㟢さんはその名を世間に知らしめることになるのだ。
松㟢さんが実際に台湾で暮らしたのは8ヶ月間のみ。しかし、そこで得たものは限りなく大きかった。
「向こうのシェアハウスで一緒に暮らした友人や、彼らを介して出会った作家たち。それぞれ信念を持って何かをつくったり、表現したりしている若者に出会って『おれ、こんなんじゃダメだな』って。もっとしっかりしなきゃなって」
「PVをプロデュースさせてもらった『PLATEAU STUDIO』のデザイナーもそうですが、熱のある同世代の作家クリエイターと繋がれたことは大きな財産でしたね。
5年後、10年後のことはまだ分からないですが、今よりもっと芝居の仕事をしていたいなとは思います」
そんな松㟢さんが現在住んでいるのは、世田谷区にある某マンションの最上階。広々としたバルコニーが自慢のこの家を、3人でシェアして暮らしている。実は、台湾と『テラスハウス』での生活を含め今回で6回目のシェアハウスなんだとか。
「『テラスハウス』のあとにも別のシェアハウスで暮らしていて、今住んでいるのはその後に知人に紹介してもらった家なんです。僕の他には写真家とグラフィックアーティストが住んでいますが、ここに住む前から友達ではありました。
シェアハウスに住む理由はいくつかあるんですが、ひとつは人の気配がしないと落ち着かないということ。それと、風通しのいい家に住みたいからというのが大きな理由ですね」
「あとはもちろん、同居人から刺激を受けたり、得たりすることも多いので。
3人とも生活がバラバラなのであんまり会わないんですが、一緒に仕事をすることもありますよ。それこそ自粛期間なんかは同居人の写真家と家の中で撮影を行ったりもしましたね」
Photograph/原田教正 Text/浅倉潤一